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2018年5月 9日 (水)

禁忌の花だとしても

土佐出身の着物好きの作家・宮尾登美子の自伝エッセイ「花のきもの」を読みました。小説のタイトルに「寒椿」と名付けるなど無類の椿好きで、少女時代、椿を自分のシンボルマークに決め、ノートの裏などにしるしを描いていたそうです。

そんな椿狂いの宮尾さん、女学校卒業の年にお父様が晴れ着を作ってくれるというので「椿の模様を」と所望するも「だめだ」と即座に一蹴。なぜなら家業が花街の芸妓紹介業だったため、首が落ちるように散る椿は忌むべき花として、固く禁じられていたらしいです。



それでも椿が好きでたまらない。宮尾さんが30すぎの頃、椿模様の羽織を着て市電に乗っていたところ、隣の席のおばあさんから
「こら、こら」
と呼びかけられ、
「あんた、まだ若い身空やのに椿の花模様なんぞを着ちゅうかね、縁起が悪いきにそんなもんは着んほうが身のためぞね」
とずけずけ言われ、そして下りぎわにもう一度、
「椿の模様のもんを身につけると、早死にするというきにね」
と念を押されたそうです。

宮尾さんは、椿を忌み嫌うというのは花街だけでなく、極めて一般的だったことを知り、ショックを受けました。実際、昔のきもの業界にもそういった思い込みがあったようで、訪問着や付け下げなどの格の高い着物には椿模様はほぼ見当たらなかったようです。

「早死にする」というおばあさんの直言はいつまでも宮尾さんの心に引っかかり、早死にこそしなかったけれど、この時以降、結婚生活の破綻、大きな借金を背負い10年以上お金のやりくりに苦労するなど、よくないことが身の上に起こります。

そして苦しい時代から脱して、作家として成功して余裕ができたとき、友人の女流書家に力を貸してもらい、自分の死出の衣裳にもしたいほど惚れ込んだ椿の着物をつくります。新品ではなく、友人の黒大島を洗い張りし、その上に椿の図案を付け下げのようにぽつぽつと20輪ほど置き紅糸で刺繍したもので、少女時代からの長い長い悲願が達成して感慨無量だったとのこと。

忌みものと言われ続けた椿模様について、自分自身の気持ちの持ち方がしゃんとしていれば、お祝いの席でも格別かまうことはない、と宮尾さんは書かれています。(つづく)

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